ゼロゼロ物件とは、一般的に入居時の敷金・礼金の費用がかからない物件の通称です。
低所得者や非正規社員、学生などに人気の広がっている、一見お得な物件に見えますが、思わぬ落とし穴が存在することがあります。
本記事では、より良いゼロゼロ物件を見つけるために、メリットやデメリット、チェックすべき項目などを紹介します。過去にトラブルの事例も多数存在しているため、事前に確認すべきことを理解して後悔のない引っ越しをしましょう。
敷金・礼金は何のために存在する?
なぜ一般的に初期費用として敷金や礼金が取られるのかを考えてみましょう。
まず、礼金とは昔からの慣習の1つで部屋を貸してくれる貸主への感謝の気持ちを伝えるためのものです。
現代では住宅が不足するということは稀ですが、貸主に都合の良い慣習が依然として残っており、一度払ったら一切返ってきません。
次に敷金とは、部屋を借りる際の保証金のような役割のお金です。
家賃の滞納時や、原状回復の際に割り当てられ、使用されなければ退去時に返ってきます。
つまり、貸主にとっての敷金・礼金とはもらって当然となっているのが現状で、特に敷金がゼロであることは貸主側へのリスクとなります。
単純に条件が良い物件も存在しますが、「何か理由があってゼロゼロ物件にしているのでは・・・?」と疑ってみましょう。
仲介手数料がかかる場合がある
仲介手数料とは、部屋を探す際にお手伝いをしてくれる不動産会社に支払うものですので、貸主とはあまり関係がないことから、ゼロゼロ物件に関わらず発生すると考えておきましょう。
一般的には家賃の1か月+消費税程度となっていますので、全くの初期費用ゼロで引っ越しということは難しいです。
事前に不動産会社の担当者に確認しておきましょう。
ゼロゼロ物件のメリット
ここまで読んで、「何か貸主に都合の良いことがあってゼロゼロ物件にしているんじゃないか・・・」と考えてしまうかもしれませんが、メリットとなる点も多数あります。
後述するデメリットと照らし合わせて、自分はゼロゼロ物件を選ぶ必要があるのかを考えてみましょう。
初期費用を抑えられる
一番のメリットは、引っ越しの初期費用が抑えられる点です。
就職、転職したばかりの人や、急に引っ越しが決まってしまった人など、まとまった資金が用意できなくても安価に引っ越しをすることができます。
短期の退去や急な退去のリスクを軽減できる
仮に退去の際に違約金が発生したとしても、かからなかった初期費用と相殺すると考えることができます。
始めから短期の入居と決まっていた場合や、急な引っ越しが決まる可能性がある場合など、違約金を払うのを前提に入居するという手段をとることができます。
浮いた費用を家具家電、家賃に回せる
引っ越しにかかるのは入居のときだけではありません。
浮いた費用を家具家電に回したり、家賃に割り当てることでワングレード上の物件を選ぶことができます。
ゼロゼロ物件のデメリット
次にデメリットを紹介します。
デメリットを理解することで、不動産会社とのやり取りの際にチェックすべき項目が明確になりますので、よく確認しておきましょう。
退去時の費用が高くついてしまう
退去の際の原状回復のためのクリーニング代は敷金から割り当てられるケースがほとんどです。
入居時に支払っていないということは、当然退去後に請求されますので、次回の引っ越し時にかかる費用が増えてしまいます。
質の低い物件の可能性がある
貸主が一番困るのは、長期の空き部屋を作ってしまうことです。
質の良い物件であれば黙っていても入居者が途絶えるということはありません。
「ゼロゼロ物件にしてまで住んでほしい部屋」である可能性があるということを忘れないようにしましょう。
その他の費用が高い場合がある
短期退去の際の違約金や年間更新料、家賃が相場よりも高い、本来貸主が負担する鍵交換代が家主負担になっている、などさまざまな部分が相場と異なる可能性があります。
ゼロゼロ物件に住むと決めた場合でも、まずは一般的な引っ越しにかかる費用を理解することで、本当に損をしていないか気づくことができます。
過去に起こったゼロゼロ物件のトラブル
以下に実際に起こったゼロゼロ物件にまつわるトラブルを紹介します。
詐欺まがいの非常に悪質な手口で、巻き込まれてから気づいても遅いので、他人事だとは思わずどんな手段でお金を回収しようとしているのかに着目してみましょう
東京都新宿区の不動産会社スマイルサービスは「鍵の一時的使用」という契約内容を名目に、1日滞納しただけで強制的に鍵を交換し、「鍵の出張交換料」の名目で高額な違約金を取り立てており、入居者3人との間で訴訟事件となっている。被害対策弁護団によると、「実態が住宅の賃貸契約であり、施設付き鍵の一時使用とするのは、借地借家法の脱法行為」と批判する。
また大阪府や兵庫県でも同様の事例が発生し、鍵や施設の一時的賃貸借契約として立ち退きを迫られた入居者らが提訴している
(引用元:wikipedia)
良いゼロゼロ物件を探すためにチェックすべきポイント
良い物件には敷金・礼金があっても人が集まりますので、ゼロゼロ物件には何か敷金・礼金をゼロにして売り出す理由があるはずです。
以下のポイントを確認し、契約書を隅々まで確認する、不動産会社の担当者へ質問するなどして、なぜゼロゼロ物件なのか理由を見つけましょう。
妥協できるポイントなのであれば、その人にとって良い物件ということになります。
敷金、礼金以外の費用
敷金・礼金がかからない分、その他の費用が高く設定されている可能性があります。
デメリットのところでも紹介しましたが、一番大事なポイントですので特に注意し、「他の物件で敷金・礼金を払ったほうがましだった」なんてことにはならないように気をつけましょう。
家賃滞納時の対応
家賃滞納時にあてがわれるはずの敷金を払っていないため、通常より家賃滞納時の対応が厳しい可能性があります。
また、保証人の有無に関わらず保証会社への契約が必須の物件が年々増えてきています。
その場合にも余計に予算がかかることがありますので、注意しましょう。
現状の部屋の状態や住環境
物件の紹介ページ上では魅力的に見えても、実際には老朽化が進んでいたり、駅から近いように見えても坂道が非常に多いなど、実際に確認しないとわからないことがたくさんあります。
ゼロゼロ物件ではそのギャップを感じる可能性が高くなりますので、必ず内見をさせてもらい、周りの環境も確認するようにしましょう。
めんどくさがったり、遠慮をして内見をしない人が多いですが、そのようなことにかかる費用は仲介手数料に含まれていますので、利用しないのは非常にもったいないことです。
遠慮したりせずに、不動産会社は必ず最大限に活用しましょう。
退去時にかかる費用
良心的であれば、修繕費と経年劣化を除いたクリーニング代を支払うことになるのですが、相場より高いクリーニング代を請求されるケースはよく見られます。
少しでも疑問に思った場合には請求された後でも消費者センターに問い合わせてみましょう。ガイドラインに沿った請求でない場合には金額が安くなることがあります。
詳細は契約書に書いてありますので、契約する前によく確認することも大切ですし、万が一契約書に書かれていないような請求が来た場合には、より優位な立場に立つことができます。
大切なのは「なぜゼロゼロ物件なのか」知ること
ゼロゼロ物件にもさまざまな物件がありますが、人によっては得と感じる人もいれば、損と感じる人もいます。
大切なのは、敷金・礼金がかからないという点でだけ判断をするのではなく、その他でかかる費用やメリット、デメリットを理解し、その物件が自分にとって最適であるかということです。
その他の条件が同様であれば、ゼロゼロ物件というのはかなりの費用節約となります。
引っ越しというのは非常に高い買い物ですので、慎重に、自分の納得のいくまで自分に合った物件を探しましょう。